「アフリカの研究をしたい」と考えているみなさんは、大学に入ったらアフリカに行こうと思っていたのに、新型コロナウイルス禍で行けなかった人もいるかもしれません。アフリカ地域研究専攻(以下アフリカ専攻)の大学院生たちも同じでした。しかし2022年度、ようやく多くの院生が、アフリカのフィールドに行く(戻る)ことができました。
アフリカはいまだ、大自然、貧困、内戦といったイメージが強いのですが、実際のアフリカは多様です。ITで起業する都会の若者もいれば、熱帯雨林でカカオを栽培しつつ狩猟採集活動を続ける人や、新しい農法を試行錯誤している人もいます。アフリカの人びとはそれぞれの暮らしのなかでグローバル化の波に翻弄されながらも、ときにそれに抗い、よりよい暮らしを模索しています。アフリカの野生動物をめぐる自然環境もまた、社会の変化や人との関わりのなかで変化し続けています。
アフリカ専攻の院生は、長期のフィールドワークを通してアフリカのダイナミズムを感じながら、テーマを設定し、研究を進めていきます。フィールドワークをするうちに、思ってもみなかったテーマに遭遇したり、想定していたのとは違った事実に気がつきます。「アフリカは知れば知るほどわからなくなる」といわれるように、まさにそれがアフリカ地域研究の醍醐味です。
地域研究者になるには、日本での地道な研究活動も欠かせません。同じ志をもつ院生仲間、先輩、教員とゼミなどで議論を重ね、学びを深めていきます。アフリカ専攻図書室にある本や雑誌も、その一助になります。フィールドワーク、大学での議論、文献研究を通じて、「博士予備論文」(修士論文相当)として研究をまとめます。その執筆過程で出てきた課題は、博士論文へと引き継がれます。
博士論文の執筆や研究は、苦しいと感じることもあるかもしれません。しかし論文が完成した暁には、それを上回る達成感が得られることでしょう。ただ、研究に終わりはありません。博士論文を完成させてもなお、わからないことがたくさん残っていることに気がつきます。そして、「アフリカは知れば知るほどわからなくなる」、とみなさんはつぶやくかもしれません。
アフリカから学ぶ「長い旅」をはじめてみませんか。

京都大学大学院 アジア・アフリカ地域研究研究科
2023-2024年度アフリカ地域研究専攻 専攻長:平野(野元)美佐
アフリカ地域研究専攻の教員や研究員、院生たちはアフリカ大陸の各地でフィールドをもち、社会や文化、自然、生態に関する幅広い研究をおこなっています。なにに興味があって、どのようなテーマや対象を設定するのか、どのような手法で調査をするのか、そして、現地の言葉を駆使し、地域とそこに住む人々と1日、1か月、1年、5年、10年、30年と人生を歩むなかで、研究者としての個性やユニークさが磨かれていきます。
アフリカ大陸の自然と人々は、さまざまな魅力を持っています。砂漠やステップ、サバンナ、乾燥疎開林、熱帯雨林、高山帯が存在し、そうした自然環境に人びとが居住し、さまざまな生活・文化のかたちがあります。また、近年の高い経済成長率によって中間層・富裕層も誕生し、都市化の進展によるさまざまな経済活動や文化現象も現れています。そして、環境問題や格差社会、内戦やテロに対する人びとの大胆で、かつ地道な取り込みなどもみられます。地域を知るには、文献を読んで知識を得ることも必要ですが、フィールドワークを通じてその地域に深く関わり、体で学び、みずからが持っている先入観や固定観念を打ち破るというのがわれわれの基本的なポリシーです。
現在のアフリカでは、貧困・飢餓問題や経済格差の拡大、感染症の拡大、環境問題、民族紛争、宗教間の対立、テロ組織の台頭が複雑に結びつき、さまざまな問題点があることも事実です。新型コロナ・ウィルスによる肺炎の拡大は、アフリカだけでなく、欧米、そして日本でも、人類にとって大きな脅威となっており、経済や社会、政治、国際関係のあり方だけでなく、人びとの日常生活や行動、社会秩序にも大きな変化をおよぼしています。
これまで2年間にわたってアフリカのフィールドワークを自粛してきたところがありますが、コロナ・ウィルスの感染症や社会情勢をみながら、アフリカにおける現地調査をゆっくりと再開していくことを計画しています。われわれはフィールドワークや文献講読、研究者どうしの議論、社会との対話などを通じて、激動する社会情勢のなかで、現地社会の論理からさまざまな事象やその変化、あるいは諸問題の構造を深く理解することを重視しています。

京都大学大学院 アジア・アフリカ地域研究研究科
2021-2022年度アフリカ地域研究専攻 専攻長:大山 修一
アフリカ大陸には多様な自然があり、多様な人々が住んでいます。ASAFASアフリカ専攻の教員、研究員、院生たちは、この広い大陸のあちこちに散らばり、研究をおこなっています。地域を知るには、文献を読んで知識を得ることも必要ですが、フィールドワークを通じてその地域に深く関わり、体で学んでいこうというのがわれわれの基本的なポリシーです。
アフリカの自然と人々は、さまざまな魅力を持っています。アフリカ専攻のメンバーは、それらに触れることによって、これまで持っていた考え方を相対化し、新たな視野を得るという経験を繰り返しています。そういった経験を共有することによって、われわれは独特の「わかりあえる感覚」 −ともにアフリカをやっているという− を持ち続けているように思います。
しかし現在のアフリカは、自然破壊、民族紛争、貧困、疾病など、さまざまな問題点を抱えていることも事実です。それらに対し、多くの国際機関や援助団体が活動を展開していますが、必ずしもうまくいっているわけではありません。われわれは、フィールドワークを通して得られた現地のまなざしから、そういった問題に取り組んでいこうと考えています。
アフリカ研究に興味を持っているあなたもぜひ、このようなわれわれの活動に参加していただきたいと思います。

京都大学大学院 アジア・アフリカ地域研究研究科
2016年度アフリカ地域研究専攻 専攻長:木村 大治
書店の棚を眺めていて、あるいはインターネットで検索してみて、アフリカに関するビジネス書が増えていると感じませんか。2000年代以降に多くのアフリカ諸国は、日本をはるかに上回る経済成長率を達成しています。援助対象から投資対象へとアフリカへ眼差しが変わりつつあるといえるでしょう。このような経済成長と同時並行的に、政治、社会、文化、生態環境等々のさまざまな分野でも大きな変化が進行しつつあります。アフリカの諸地域は多様であり、それぞれの実態を学際的に明らかにしていくことは、まさに無限の課題としてあなた方の個性的できめ細かい取り組みを待っています。そして、変化を知るためにも、またパートナーとして協働するためにも、かつてのアフリカに対する幅広く深い理解も必要とされています。
アフリカを主たる研究対象とする教員が10名以上も集う当専攻は、日本で最高級のアフリカ教育・研究環境を提供できると確信しています。京都でじっくりとアフリカと向き合ってみませんか。

京都大学大学院 アジア・アフリカ地域研究研究科
2015年度アフリカ地域研究専攻 専攻長:池野 旬
学部を卒業される皆さんは今、自身の新たな可能性を試し輝かしい未来を開きたい、と思っている人も多いと思います。本専攻は、理系、文系という専門分野の枠をこえたフィールドワークによって、「アフリカの今」を明らかにする研究を推進しています。日本に入ってくるアフリカの情報は、紛争、干ばつ、森林破壊、経済開発など、トピックをおったものばかりで、そこに通底する自然と人々の暮らし・歴史を総合的に理解する手立ては限られています。このような「地域の理解」なしに、アフリカにおける様々な問題の解決に貢献することはできません。また、あらゆる分野でグローバル化が進む現在、先進国-発展途上国の二分法を超えた新たなパラダイムの創出が求められています。
社会の格差、管理化が進む中で、個人が能力を発揮し、キャリアをつむ道は、一筋縄ではいきません。また、だれもが考えるような道を歩んでいては、競争社会に生き残ることはできません。学部の経験と関心を大きく広げて、「アフリカ問題」の中でとらえ直し、真の国際人への道をめざそうではありませんか。

京都大学大学院 アジア・アフリカ地域研究研究科
2014年度アフリカ地域研究専攻 専攻長:木村 大治